葬儀・相続の全て

親族が亡くなった際の手続を全てご紹介します。

山田さんは、病院からの電話で「父が亡くなった。」ことを知りました。山田さんは、長男として葬式の手配等全ての準備をしなければなりません。

葬儀の手配と納骨

まず、親族が亡くなられた場合、かかりつけ医がいればその医師に連絡し、死亡診断書を作成してもらいます。相談する医師がいない場合には警察に相談することになります。

次に、葬儀社に葬式の打ち合わせをすることになります。
その後、お寺に電話して通夜、葬儀等の打ち合わせをすることなります。
葬式費用を用意する必要があり大きな出費となります。
葬式費用はぴんきりであり、できれば相見積もりをお勧めします。

役立つコラム

Q 父は一人暮らしでした。毎日父の様子を見に来ているヘルパーさんが父を発見してくれました。まずやらなければならないことは何ですか。

(1)主治医への連絡
お父さんの主治医を知っていれば、主治医に父が亡くなったことを報告します。
例えば、お父さんが病院で亡くなっていれば、主治医が病死を確認して死亡診断書を作成してくれます。

(2)主治医が分からないとき
主治医が分からないときには、警察に父が亡くなったことを連絡します。
警察(警察医)が、事件性が無いかを判断します。死体検案書が作られます。
死体検案書も死亡診断書も同じ書式です。

(3)死亡診断書(死体検案書)
これらの書類がないと、火葬の手続、役所の手続ができなくなります。
まずは、親族が亡くなったときには、主治医への連絡が既に終わっているかを確認しましょう。
死亡診断書(死体検案書)は数枚コピーをしておきましょう。
生命保険の手続等で、死亡診断書(死体検案書)を提出することがあります。コピーをしておかないと再発行をお願いしないといけなくなります。

(4)死亡届・火葬・埋葬許可書
死亡診断書(死体検案書)を持って市役所に行き、以下の二つの手続きを行います。
①父が亡くなったとの届(死亡届)
②遺体の火葬・埋葬の許可(埋葬許可)を行います。
一般的には、上記の①②は、葬儀業者が行ってくれます。

Q 葬式の相場と、業者を選ぶコツを教えてください。

(1)相場を調べる
お葬式は200万円ぐらいかかります。
相続費用はピンキリです。あまりに高い業者も存在します。
気が動転しているかもしれませんが、今はインターネットで相場を調べることも可能です。
また、全部を背負いすぎないよう、例えば葬儀選びを誰かに委ねることも大切なことです。

(2)葬式代金の積み立て(互助会等)の確認
亡くなった方が、葬式代金の積み立てを行っている(互助会等に加入している)可能性があります。
家族で確認が必要です。

(3)相見積もり
相見積もりをとっても失礼にあたりません。また、相見積もりをとった後に、どの費用まで含まれているか確認が必要です。
①追加費用として、どんな費用がいくらぐらいかかるのか聞きましょう。
②他の業者と価格が大幅に違えば、その理由や、相場についても聞いても失礼はありません。

Q 通夜、葬儀の流れを教えてください。

(1)亡くなった日
親族への報告、通夜等にお呼びする人等への連絡を行います。
お葬式の業者を選びます。

(2)通夜
特に決まりはありませんが、亡くなってから、2日目もしくは3日目に通夜を行います。

(3)葬式
特に決まりはありませんが、亡くなってから、3日目もしくは4日目にお葬式を行います。

Q 父が無くりました。父の通夜、葬儀についてどの程度の人に知らせるべきでしょうか。
(1)親族
葬式どの範囲で親族を呼ぶかは、親族内で暗黙のルールがあることもあります。
「前の〇さんのときはどうだっかか。」親族に相談してもよいでしょう。

(2)知人友人
年賀状や、携帯電話の履歴等から推察するしかありません。
現実的には、遺族で亡くなった方の知人友人関係を把握するのは困難です。

亡くなる前に、葬式に呼んでほしいほしい知人友人関係について聞いておくべきです。

(3)近所の方
近所の方については、お付き合いが分かる範囲で簡単に挨拶をしてもよいかもしれません。

(4)勤め先
亡くなった方が会社員等であれば、会社等に連絡しましょう。

Q 葬式費用等が必要です。父が亡くなったことを黙って、父の預金からお金を引き出してもよいのですか。

(1)預金口座の凍結
市役所等で死亡届を作成しても、自動的に銀行等に連絡がいき、口座が凍結されるわではありません。
口座名義人が亡くなったことを銀行の窓口で告げると、口座が凍結されて以下の手続が必要になります。
なお、付き合いのある銀行であれば、窓口で相談して一部引き落としてもらえることもあるようです。

(2)「預貯金の仮払い制度」
相続人全員の同意がなくても、預金額の3分の1×法定相続分について払戻請求ができます。これを仮払いといいます。
相続関係を示す戸籍等が必要になるために、これを準備するには1ヶ月以上の時間がかかります。
引き出し希望額が150万円を超える場合には、家庭裁判所の許可が別途必要です。

(3)遺産分割後の解約手続き
相続人の全員の同意があれば、(相続財産の)預金全額の払戻請求ができます。
相続関係を示す戸籍だけでなく、相続人全員の印鑑がある遺産分割協議書等が必要になります。
これを準備するには1ヶ月以上の時間がかかります。
相続人全員との間で、遺産分割について円滑に合意できることが前提となります

(4)遺言による解約手続
「その預金を遺贈する。」との遺言があれば、その人だけでも解約手続を行えます。
なお、自筆証書遺言の場合には、家庭裁判所で検認の手続きが必要です。

(5)信託特約
最近は、自分が亡くなったときには、息子が引き出せるようにしておく等の銀行口座の信託特約という契約もあるそうです。

(6)法律家としてのアドバイス
法律家として、銀行等に黙って引き落としてもよいとはアドバイスできません。

 

Q 葬式費用等は相続人が平等に負担するのですか。相続費用等の負担でもめないように  気を付けておくことはありますか。

(1)葬式費用

「葬式費用を相続人が支払う。」もしくは「葬式費用は相続財産から支払わなければならない。」というルールはありません。
葬式費用はぴんきりであり、喪主(葬式の発注者)で金額を決める側面もあります。

法律上は、葬式費用は、葬儀業者に葬式を発注した人(喪主)にあります。

もちろん、遺産分割の際には、「葬式費用は相続財産から支払う」という結論が多いのも事実です。

(2)トラブルの防止

「葬式費用をいくらにするのか。」「葬式費用は相続財産から支払うこと」については、相続人全員で連絡をとって合意を取り付けておくのがよいでしょう。
最近的はLINEや、メールで証拠を残しておくのがよいでしょう。

 

期限のある相続等の手続

親族が亡くなられたときに、以下の手続は急ぎの手続きとなります。つまり、年金受給の停止、相続放棄、税務申告については、各手続の期限をチェックしなければなりません。

役立つコラム

Q 年金の手続、健康保険の手続、相続手続、税務手続について、急ぎの手続として何がありますか。その期限はいつですか。誰に相談したらいいですか。

(1)年金事務所
亡くなってから、直ちに、金事務所に連絡しましょう。
連絡が遅れると、年金事務所が年金受給者が亡くなったことを知らずに、間違って年金を支払うことが起きる可能性があります。逆に、毎月の年金の口座引落がされてしまう等の問題もあります。

亡くなった方がサラリーマン(の妻)であれば、会社に連絡します。
個人事業主や、退職者であれば、年金事務所に連絡します。。
会社もしくは年金事務所に聞けば教えてくれます。

(2)相続放棄
借金等があり、マイナスの相続財産が多い場合には相続放棄をします。
相続放棄の手続は、亡くなったときから3ヵ月以内と理解して下さい。
戸籍等の収集に時間がかかることもあり、亡くなったときから2ヵ月以内には相続放棄の手続を開始する必要があります。

期間を過ぎると相続放棄できなくなります。借金を相続して返済義務が生じます。
相続放棄については弁護士もしくは司法書士にご相談ください。

(3)税務手続
亡くなった人が個人事業主である等、確定申告をしていた場合には、亡くなったときから4ヵ月以内と理解して下さい。
相続財産が一定基準以上であれば、相続税の申告が必要になります。
相続税の申告は、亡くなったときから10ヵ月以内と理解して下さい。

税金については税理士にご相談ください。

年金、健康保険の手続

亡くなられた親族が年金をもらっていた場合には、直ちに年金事務所に連絡しなければなりません。連絡が遅れた場合にはややこしい返金手続が必要になったり、未支給年金を受け取れなくなったりするケースがあります。

亡くなられた親族が会社に勤めていれば会社に相談します。それ以外の場合には市役所に相談します。
年金、健康保険の手続としては、遺族年金、埋葬費等の手続が必要となります。

役立つコラム

Q 年金受給の停止、未支給年金の請求について教えてください。

(1)年金事務所への連絡

亡くなってから、直ちに、金事務所に連絡しましょう。
連絡が遅れると、年金事務所が年金受給者が亡くなったことを知らずに、間違って年金を支払うことが起きる可能性があります。

逆に、毎月の年金の口座引落がされてしまう等の問題もあります。

亡くなった方がサラリーマン(の妻)であれば、会社に連絡します。
個人事業主や、退職者であれば、年金事務所に連絡します。。
会社(もしくは全国健康保険協会)もしくは市役所に聞けばどこに連絡するのかよいのか教えてくれます。

(2)未支給年金

年金を受け取っていて方が死亡した場合に、その者に支給されるべきであったが、未だ支給されてていない年金について、一定範囲の遺族が代わって受け取れることあります。
これが未支給年金です。

手続は年金事務所で行います。

相続放棄をしても、未支給年金を受け取れます。しかし、年金事務所が年金受給者が亡くなったことを知らずに、元年金受給者の口座に入金してしまった場合、遺族がこれを取り返すことは不可能になります。

未支給年金を請求できるケースで、相続放棄を行う場合には、早々に年金事務所に連絡をする必要があります。

 

Q 相続放棄しても、未支給年金は請求できますか。

未支給年金は相続財産ではありません。

相続放棄をしても、一定範囲の遺族は未支給年金を受け取れます。

 

Q 埋葬費等の手続について教えてください。

国民健康の場合には埋葬費、協会けんぽ(全国健康保険協会)の場合には、(健康保険)埋葬料が、埋葬を行う人に支給されます。

亡くなった方がサラリーマン(の妻)であれば、会社(もしくは全国健康保険協会)に連絡します。
個人事業主や、退職者であれば、市役所に連絡します。。
会社(もしくは全国健康保険協会)もしくは市役所に聞けば教えてくれます。

 

Q 遺族年金の請求について教えてください。

一定の遺族は遺族年金の請求ができます。

年金事務所で確認しましょう。

 

各種支払いのストップ

例えば、亡くなられていた親族が借家に住んでいた場合、賃貸人に連絡して賃貸約契約を解除しなければなりません。その他、新聞や電気ガス、水道について順次契約を解除する必要があります。

役立つコラム

Q 亡くなった父は借家でアパートを借りていました。賃貸借契約の解除をしたのですが、その他に解約しなければならない契約についてはどうやってチェックしたらいいですか。

(1)郵便物と通帳
お父さんが締結した契約の全てを網羅して開示する手続は残念ながらありません。
郵便物(請求書)、通帳の引き落としから、探すしかありません。

まずは、請求書や、通帳類がないか探しましょう。

(2)転送届
定期的に郵便物を取りに行くことは限界があります。
郵便物の転送届を出して置ければ、郵便物(請求書)を取得できます。

(3)通帳のチェック
電気、ガス、水道、携帯電話、家賃の引き落としがされているかチェックします。
仮に、引き落としがなければ、どこかに他の通帳がある可能性があります。

通帳の引き落とし(支払)について、一つ一つ名目を確認します。
請求書があれば、これと照らし合わせます。

支払いの中で不要な契約を見つければ、一つ一つ、当該会社に連絡して解約の手続きをすることになります。

(4)よくある契約
まず、新聞は止めましょう。新聞を止めていないと留守であること分かってしまいます。

次に、家賃の金額は大きいので、早めに解約通知をしましょう。特に家賃については1か月前通知が義務付けられていたりするので、チェックが必要です。
家賃の契約書は駆らなずチェックしましょう。

よくあるのは,光熱費関係(電気,ガス,水道),通信関係(携帯電話,インターネット),保険などがあげられます。
通帳の毎年の引き落としを見つけて、問い合わせたところ、ポイントカードの年会費であることが判明したということもります。

(文責 平岩)。

Q 父は死後1か月して発見されました。父が借りていた借家のオーナーから「異臭が取れない。」「物件の価値が下がった。」として損害賠償請求すると言われています。どうすればいいですか。

(1)場合分け
オーナーは,不法行為に基づく損害賠償請求を考えていることでしょう。不法行為は,故意過失が要件となりますので,お父さんが①自殺した場合,②自然死の場合,③他殺の場合,で分けて考える必要があります。

(2)①自殺の場合
お父さんが①自殺した場合,賃借人には,建物の引き渡しを受けてから返還するまでの間,善良な管理者の注意をもって建物を使用収益する義務を負いますので,お父さんには故意過失が認められ,不法行為責任を負うことになります(東京地裁平成27年9月28日判決)。この場合,原状回復費用や賃料減収分が損害として認められます。

相続放棄を選択しないケースでは、オーナーと賠償額について交渉する必要があります。
オーナーの請求が過剰でないかチェックする必要があります。弁護士にご相談下さい。

(3)自然死の場合
お父さんが②自然死の場合,借家で死亡したとはいえ,人間の生活の本拠である以上,自然死が発生することは,当然に予想されることですので,お父さんに故意過失は認められず,不法行為責任を負わないことになります(東京地裁平成19年3月9日判決)。

(4)他殺の場合
お父さんが③他殺の場合も,殺害した犯人が責任を負うことはあれ,お父さん自身に責任はないので,②自然死の場合と同様に考えられます。

(5)相続放棄
お父さんが不法行為責任を負う場合でも,お父さんは既に亡くなっていますので,その責任は,相続人が相続することになります。

お父さんのプラス財産とマイナス財産(借金等)を比べて、マイナス財産が多ければ、相続放棄を検討することになると思います。

もっとも、お父さんの賃貸借契約の保証人に相続人がなっている場合,その方は,お父さんの相続人としての責任と,保証人としての責任の双方を負いますので,相続放棄をしても保証人としての責任は免れません。
この場合もオーナーと賠償額について交渉する必要があります。
オーナーの請求が過剰でないかチェックする必要があります。弁護士にご相談下さい。

(平岩)。

相続財産の捜索

例えば、亡くなられていた親族が一人暮らしをしていた場合に、どんな相続財産があるのか分からないケースが出てきます。まずは、相続財産を捜索する必要が出てきます。

役立つコラム

Q 父は被後見人であり、後見人であった弁護士の先生から、「相続人の代表者として書類を受け取りに来てほしい。」と言われています。どうすればいいですか。

(1)成年後見人作成の管理計算報告書
成年後見人となった弁護士は,被後見人死亡により職務が終了すると,管理計算報告書という書類を作成します。管理計算報告書には,後見人就任から死亡までの被後見人の収支を記載しますので,それを見ればお父さんの残してくれた財産を網羅的に知ることができます。

(2)成年後見人となった弁護士の業務
被後見人が死亡した場合、成年後見人としては、相続人の一人に、相続財産を引き継げば足りるとされています。
しかし、
他の相続人がいる場合には、先んじて相続財産を知っている、という状況を作ってしまうと,他の相続人から「お父さんの残してくれた財産を隠匿しようとした。」等の誤解を生む可能性もあります。
 可能であれば、他の相続人に対しても,「成年後見人であった弁護士から書類の受け取りを求められている。」ということを連絡し、複数人で一緒に受け取りに行かれた方が後々不要な紛争を避けるという意味で無難です。

(平岩)。

 

Q 父は一人暮らしをしていて、父の財産について何があるか分かりません。どうやって探したらいいですか。

(1)相続財産
故人の財産を把握するというのは,簡単なように見えて非常に難しい問題です。
お父さんの遺品を整理する際に,財産にまつわる書類がないか確認をしましょう。

相続財産の大分類として,①不動産(土地建物)、②株式、③現金、預金、④投資信託,⑤保険金があります。

不動産の権利書、株券、通帳、保険証や、その他の請求書類を集めましょう。
郵便物(請求書)、通帳の引き落としも、大事な手がかりです。

 

(2)転送届
定期的に郵便物を取りに行くことは限界があります。
郵便物の転送届を出して置ければ、郵便物(請求書)類を全て解除することができます。

 

(3)①不動産(土地建物)
固定資産税の書類があれば、その市に存在する不動産が分かります。
なお、固定資産税は市単位で課税されます。大阪市の不動産の有無は、京都市が発行した固定資産税の資料だけでは判明しません。
市単位の固定資産税の資料を集める必要があります。

固定資産税を口座引落にしていれば、通帳の引き落とし額と、固定資産税の書類の額と比べます。

その数字が異なっていれば、別の不動産がある可能があります。

 

(4)②株券
(上場)株式については、年に1回株主総会があります。郵便物をチェックすれば、株式は分かります。

亡くなった人が中小会社を経営している場合には、税金の申告書類や、法人登記書類で株式数等を確認することになります。
その会社の税務関係を担当していた税理士や、法人登記を担当してた司法書士に確認します。

 

(5)③現金、預金

電気、ガス、水道、携帯電話、家賃の引き落としがされているかチェックします。
仮に、引き落としがなければ、どこかに他の通帳がある可能性があります。
通帳の引き落とし(支払)について、一つ一つ名目を確認します。
請求書があれば、これと照らし合わせます。

入金を確認しましょう。亡くなった人がサラリーマンである場合、その通帳に毎月給与が入っている場合には、その通帳がメインの可能性が高いです。

 メインの通帳は過去1年分はチェックしましょう。亡くなる直前、直後で葬式代等のために引き出されることがあります。
 このようなケースもありますので、通帳は過去1年分をチェックするのがベストです。 

100万円単位で大きな出金がされていれば、その使途について調査が必要です。

 

(6)④投資信託,⑤保険金

通帳から毎月定額が引き落とされている場合には、投資信託や、保険金の可能性があります。

保険証券や、郵便物等をチェックします。

 

(7)その他税務関係書類

その他、税務関係資料があれば、一応チェックしましょう。

 

(8)その他

 なにはともあれ,お父さんと生前,どういった財産があるのか,きちんと聞いておくことが無難です(平岩)。

 

借金の有無をチェック

亡くなった方が事業主や会社経営者である場合には、同人が保証人になっている等、家族も知らない借金が出てくる可能性があります。
亡くなられていた親族が多大な借金をしていた場合には、相続放棄をしなければその借金を引き受けることになります。相続放棄の期限はその方が亡くなったことを知った時(通常は相続人が死亡した時)から3か月です。

役立つコラム

Q 家族も知らない借金が出てくるケースとはどんな場合ですか。どうやってチェックしたらいいですか。

(1)借金が後日発覚するケース

家族には借金を知られたくない,という方は大勢おられます。被相続人の死亡後に金融機関等から相続人に請求が来て気づくケースがままあります。最近は、債権回収会社が金融機関等から債権を購入し請求してくるケースもあるので,被相続人の死亡時には想定もしていなかった借金が出てくるケースがあります。

(2)故人の借金をチェック

故人の借金を把握するのは、個人の財産を把握するのと同じく、非常に難しい問題です。
お父さんの遺品を整理する際に,借金にまつわる書類がないか確認することになります。

請求書(郵便物)、通帳等をチェックします。

借金があれば、金融機関から定期邸に請求がありますので、請求書がないか探します。

通帳の引き落としも、大事な手がかりとなります。定期的に金融機関等に送金していれば、借金を疑います。通帳の送金先名義を頼りに、金融機関等で電話することもあります。

通帳の引き落とし(支払)について、一つ一つ名目を確認します。
請求書があれば、これと照らし合わせます。

(3)転送届

定期的に郵便物を取りに行くことは限界があります。
郵便物の転送届を出して置ければ、郵便物(請求書)類を全て解除することができます。

(4)CIC、JICC、全銀協
信用情報機関は、クレジットカード、消費者金融からの借り入れ、銀行からの借り入れ(保証)についての個人の取引履歴を管理する期間です。例えば、A銀行は信用情報機関を通じて、Bさんがどれだけ他の銀行で借りているかを把握して、新しく貸しても良いかどうかを判断しています。金融機関が他の金融機関の利用状況を把握するのに使います。なお、本人も、信用情報機関に自分の記録の閲覧を請求できます。
 故人に借金があるか心配であれば,CIC、JICC、全銀協などの信用情報機関に照会することもできます。本人だけでなく、相続人も照会請求できます。

インターネットで「CIC、JICC、全銀協」を調べれば、専門家に頼まなくても自分で申請する方法を調べることができます。

(5)相続放棄の検討
 被相続人に借金がある場合には相続放棄を検討します。
 プラス財産とマイナス財産(借金等)を比べて、マイナス財産が多ければ、相続放棄を検討します。
(平岩)。

 

Q 相続放棄の期限はいつまでですか。その期間は延ばせるのですか。

(1)3ヵ月以内
相続放棄は,「自己のために相続の開始があったことを知ったときから三箇月以内」にする必要があります(民法915条1項本文)。この「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」とは,相続人が相続開始の原因たる事実の発生を知り,かつ,そのために自己が相続人となったことを覚知したときを意味します(大審院大正15年8月3日決定)。すなわち,被相続人の死亡を知っただけでなく,自らがその被相続人の相続人であることを自覚したときから開始します。この3ヶ月の期間のことを熟慮期間といいます。

理屈上は上記のとおりですが、「どういう事情があれば知ったとき」にあたるのか素人考えて判断するのは危険です。

相続放棄の手続は、亡くなったときから3ヵ月以内と理解しておくのがよいでしょう。
戸籍等の収集に時間がかかることもあり、亡くなったときから2ヵ月以内には相続放棄の手続を開始する必要があります。

 この「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」の要件については,被相続人に相続財産が全く存在しないと信ずるにつき相当な理由がある場合,相続財産の全部又は一部の存在を認識したとき又は通常これを認識し得べき時から起算するとされています(最高裁昭和59年4月27日判決)。

(平岩)

 

(2)熟慮期間の延長

 相続放棄をしてしまうと、マイナス財産(借金等)を相続しないで済みますが、プラス財産も相続できません。プラス財産をマイナス財産を比べて、マイナス財産が多い場合に、相続放棄を検討することになります。しかし、故人のプラス財産もしくは、マイナス財産を把握するのに時間がかかるケースもあります。

 このような場合、家庭裁判所に熟慮期間の伸長の手続きをすることができます。
 これは、もともとの3ヶ月にプラス3ヵ月、合計6か月間に、熟慮期間(相続放棄するかどうか)を考える時間を延長してもらうという手続きです。

この時間の間に、故人のプラス財産もしくは、マイナス財産を把握し、かつ、相続放棄を選ぶ場合には、相続放棄の手続きまでを終えなければなりません。

 

Q 限定承認という手続があると聞きましたが、あまり使われていないと聞いています。どうしてですか。

(1)限定承認
限定承認とは,「相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して,相続の承認をすること」(民法922条)をいいます。
限定承認をすれば、相続人は、相続した財産以上の債務を負わないようにできる制度です。
また、相続した財産が1000万円であり、相続した借金が1億円であった場合に、債権者に1割の金額を平等に分配して清算する手続きでもある。

 しかしながら、限定承認はあまり利用されていません。
 その理由の1番は、相続放棄と比べると経済的メリットが少ないということです。

 限定承認をすれば、相続人は、相続した財産以上の債務を負わないようにできます。しかし、相続放棄によっても同様の経済効果を期待できます。

 相続放棄は裁判所に必要書類を出すだけの手続であり、専門家に依頼しても一人3万円~5万円程度です。
これに対して、限定承認は精算手続きの一種であり、専門家に頼めば50万円程度の費用がかかります。
専門家に依頼する費用が発生することを考えると、例えば、大事な自宅の価値が2000万円であり、相続人が2000万円を別に持っており、借金が5000万円あるようなケースでは、相続人が限定承認後に、債権者に2000万円を支払って、自宅を維持し続ける等の特別な事情がある場合に限られます。

Q 父が死亡して、3年後に父の借金が見つかりました。もはや、相続放棄が出来ないのですか。

(1)3ヵ月以内
相続放棄は,「自己のために相続の開始があったことを知ったときから三箇月以内」にする必要があります(民法915条1項本文)。

お父さんの葬式に参列しているようなケースでは、3年後にお父さんの借金が見つかった場合,熟慮期間は経過していますので,相続放棄ができないように思われます。

(2)判例による訂正

 判例は、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき」とは,被相続人に相続財産が全く存在しないと信ずるにつき相当な理由がある場合,相続財産の全部又は一部の存在を認識したとき又は通常これを認識し得べき時から起算するとされています(前述最高裁昭和59年4月27日判決)。

 「故人に借金がある。」と知らなかった場合には、「故人に借金がある。」とがある知った(具体的には、金融機関から催告書がと届いたとき等)から、3ヵ月以内であれば相続放棄の手続ができます。

戸籍等の収集に時間がかかることもあり、これらの催促状が届いたときからヵ月以内には相続放棄の手続を開始する必要があります。

(平岩)。

Q 相続放棄をしても、生命保険は請求できるのですか。埋葬費等は請求できるのですか。未支給年金は請求できるのですか。遺族年金は請求できるのですか。

(1)生命保険
生命保険は相続財産になるものと、そうでないもので分かれます。

相続財産にならない生命保険は相続放棄をしても受け取れます。請求しましょう。

相続放棄する場合には、その生命保険が相続財産にあたらないかは、保険会社もしくは弁護士に確認してください。
仮に、相続財産にあたる場合には、法定単純承認(相続放棄できなくなる。)という問題があります。

(2)埋葬費等
国民健康の場合には埋葬費、協会けんぽ(全国健康保険協会)の場合には、(健康保険)埋葬料が、埋葬を行う人に支給されます。
亡くなった方がサラリーマン(の妻)であれば、会社(もしくは全国健康保険協会)に連絡します。
個人事業主や、退職者であれば、市役所に連絡します。。
 会社(もしくは全国健康保険協会)もしくは市役所に聞けばどこに連絡するのかよいのか教えてくれます。

埋葬費等は相続財産ではありません。相続放棄をして請求できますので、請求しましょう。

 

(3)未支給年金

年金を受け取っていて方が死亡した場合に、その者に支給されるべきであったが、未だ支給されてていない年金について、一定範囲の遺族が代わって受け取れることあります。
これが未支給年金です。

手続は年金事務所で行います。

相続放棄をしても、未支給年金を受け取れます。しかし、年金事務所が年金受給者が亡くなったことを知らずに、元年金受給者の口座に入金してしまった場合、遺族がこれを取り返すことは不可能になります。

未支給年金を請求できるケースで、相続放棄を行う場合には、早々に年金事務所に連絡をする必要があります。

 

(4)遺族年金

一定の遺族は遺族年金の請求ができます。

 年金事務所で確認しましょう。

 遺族年金も相続財産ではありません。相続放棄をしても受け取れますので、請求をしましょう。

 

Q 相続放棄の相談は、私一人ではできないのでしょうか。相続人全員でした方がよいのでしょうか。

(1)相続放棄は一人でできる。
相続放棄は,相続人一人一人が個々の判断で行うことができます。
共同相続人がいても,一人で相続放棄の相談に来られても構いません。

(2)相続放棄を相続人全員で一緒にやった方がよい理由
オススメとしては、共同相続人全員で、専門家に相続放棄を依頼することをお勧めします。

まず、それぞれに専門家に依頼されると、それぞれの専門家が戸籍収集を行うことになります。
そうなると、無駄が発生してしまいます。一人の専門家に相続人全員が依頼して、相続放棄の手続費用のディスカウントを交渉することをお勧めします。

次に、第一順位の相続人全員が相続放棄をすると、第二順位の相続人に相続権が移ります。例えば、亡くなったお父さんに多額の借金があって、妻と子供が相続放棄をすると、相続権はお父さんの直系尊属であるおじいさん、おばあさんに移ります。仮に、おじいさん、おばあさんが亡くなっている場合には、お父さんの兄弟(おじさん、おばさん)に相続権が移り、同人らの相続放棄が必要になります。

相続放棄をする場合には、一族全員で相続放棄をする必要があります。

なぜ、知らせてくれなかったのか等のトラブルを避けるためにも、少なくとも、相続人全員の連絡先をもって、相談に来て頂けるとありがたいです。

 

Q 相続放棄を選択する場合にやってはいけないこと、法定単純承認となってしまう行為とは何ですか。
  例えば、葬式代を亡くなった故人の預金から出してはダメですか。形見分けで時計をもらうのもダメですか。

(1)法定単純承認
プラス財産だけ相続して、マイナス財産(借金)だけ相続しないというのは不公平です。
相続財産を受け取る等の行為をすれば、法定単純承認となって、相続放棄が出来なくなります(民法921条3号)

相続財産を処分したとき(民法921条1号)、3ヵ月以内に相続放棄をしなかったとき(民法921条2号)、相続財産の一部を隠匿したとき(民法921条3号)の事情があれば、法定単純承認とみなされます。つまり、相続放棄ができなくなります。

(2)よくある問題
葬式代や病院代は、相続財産から出してもよいと考えて、故人の預金口座から引き出すケースや、
 形見分けとして、着物や時計等を分けてしまうケースがあります。

(3)判例の考え方
 市場価値のないものや、その価値がわずかな物であれば法定単純承認事由には該当しません。しかし、どの程度の経済的価値を有するものであれば、法定単純承認になるか否かは微妙なところがあり、安易に受け取ることはお勧めできません。

 葬式代等もわずかの金額であれば、単純承認にならないケースもあります。

預金を引き出してしまった場合には、同額の現金をどこかで保管しておく等の対応をした方がよいでしょう。

 山口地裁徳山支部昭和40年5月13日判決によりますと,夫が死亡し,妻が夫の背広上下,冬オーバー,スプリングコート,時計,椅子などを持ち帰った事案において,相続財産全体に比してわずかな価値しかないとして,法定単純承認の成立を否定しました。

 東京地裁平成12年3月21日判決においては,娘が死亡し,その母親が娘の洋服や家具を持ち帰った事案において,新品の洋服やその洋服の量が相当なものであったことから,持ち帰った遺品が一定の財産的価値を有し,形見分けの範囲を逸脱しているとして,法定単純承認の成立を認めています。 

 なお,東京地裁平成12年3月21日判決においては,民法921条3号の趣旨は,「相続人による被相続人の債権者に対する背信的行為に関する民法上の一種の制裁」であるから,「隠匿」とは,「相続人が被相続人の債権者等にとって相続財産の全部又は一部について,その所在を不明にする行為」をいい,「相続人間で故人を偲ぶよすがとなる遺品を分配するいわゆる形見分けは含まれない」と判断しています。

 また,東京地裁平成12年3月21日判決においては,相続人の認識として,隠匿行為の結果,「被相続人の債権者等の利害関係人に損害を与えるおそれがあることを認識している必要があるが,必ずしも,被相続人の特定の債権者の債権回収を困難にするような意図,目的までも有している必要はない」と判断しています。

(平岩)

各種届出等

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税務申告

相続財産が一定以上であれば、相続税の申告が必要です。相続税の申告はその方が亡くなったことを知った時(通常は相続人が死亡した時)から10か月です。
なお、亡くなった方が個人事業主である等確定申告していた場合には、その方が亡くなったことを知った時(通常は相続人が死亡した時)から4か月以外に準確定申告が必要です。

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葬儀・相続チェックシート

親族が亡くなった際の手続について、チェックシートを公開しております。参考にして下さい。